「熟練の職人がもうすぐ引退するけれど、あの人しか知らない『コツ』がたくさんある。なんとか形に残せないだろうか……」
町工場などの中小製造業では、こうした技術継承の悩みをよく耳にします。ベテランの頭の中にある暗黙知(言葉にされていないノウハウ)を、忙しい業務の合間に文章化するのは非常に骨が折れます。後継者が質問しても、「見て覚えろ」「感覚だ」と返ってくることも少なくありません。
この「暗黙知の言語化と整理」を、AIがサポートしてくれます。
スマホでインタビューを録音し、AIに構成を任せる
私がよく用いるプロセスは非常にシンプルです。まずはスマートフォンの録音機能などを使い、ベテラン職人が作業している横でインタビューを行います。「ここではなぜこの角度なんですか?」「この音の変化は何の合図ですか?」と、対話形式でコツを引き出します。
そして、その録音データを文字起こしし、AI(ClaudeやChatGPTなど)に投げます。
「以下のインタビュー記録を読み込んで、新人向けの分かりやすい作業手順書を下書きしてください。特に、ベテランならではの『コツ』や『注意点』が際立つように整理してください。」
これだけで、AIは対話の記録を整理し、ステップごとの手順書を下書きしてくれます。散らかっていた会話の断片から、「準備」「基本動作」「トラブル対応」といった見出しをつけ、わかりやすく構造化してくれます。
月額約2,800円(2026年6月時点・税やプランで変動)のAIを使えば、まるで優秀な編集者にインタビュー記事をまとめてもらうような感覚で、技術マニュアルの土台を用意できます。
私が守っているルール:AIが下書きし、人間が確認する
AIは文章を整理する強力なツールですが、ここでも私が個人的に気をつけているルールがあります。
「AIが下書きし、人間が確認して使う」
そしてもう一つ、「個人情報や機密に関わる独自の技術情報はAIに入力しない(匿名化や抽象化をする)」ということです。AIのデータ利用設定をオフにしたり、会社のポリシーを確認してから使うようにしています。
出来上がった手順書は、そのまま鵜呑みにせず、ベテラン職人や後継者と一緒に読み合わせを行い、「ここはもう少し違う表現がいい」「このステップが抜けている」と微調整を行います。AIはスタッフに代わるものではありません。あくまで「言葉にするのが難しい技術」をマニュアル化する負担を減らし、本来の「技術の継承」に集中するための補助ツールです。
「文章を整理する」という作業をAIに任せる。そうして浮いた時間で、実際に技術を伝え、人と向き合う。これが製造業における、賢いAIの使い道だと私は考えています。
まず小さく始めるための、無料チェックリスト
※これは私個人の体験の共有であり、専門的な助言ではありません。結果には個人差があり、特定の成果を保証するものではありません。導入の判断・検証はご自身の責任でお願いします。記載のツール提供元とは一切の利害関係はありません。 ※個人情報・機密情報は入力しない、あるいは匿名化するなど、必ず会社の方針を確認してご利用ください。
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